中尉と大佐に向かって深々と頭を下げる。中尉は小さく笑って、「いいのよ、デートだもの。仕方ないわ」とからかうように言った。まだ何事か言いたげな大佐を引きずるようにして背を向けて歩いていく。
 "デート"という言葉を否定するひまもなく中尉は行ってしまったから、なんだか腑に落ちない気もした。別に誤解されて困るような人間はいないが。頭のなかにちらつく青を振り払うかのように頭を振って、わたしは家路を急いだ。






 結局、家に帰り着く頃には日はだいぶ傾いてしまっていた。暗くなる前に干していた洗濯物を取り込んで、一息ついてソファーに腰を下ろす。なんだかんだと色々あって疲れてしまった。背もたれに頭を預けると、一気に眠気が襲ってくる。
 落ちて来る瞼に抗う必要性はどこにもない。わたしは従順に目を閉じた。うっとりするほどのまどろみが体を包み込み、まるでどこかへ落ちていくかのように意識が遠のいていく。

ジリリリリリ

 突然の呼び出し音。びくりと反射的に体が跳ねたが、寝ぼけた体はそれ以上動かない。それでも根気よく電話はわたしを呼び続けた。
 のそのそと、まるでナマケモノのようにソファーから立ち上がり、電話台へ向かう。ようやく受話器に手をかけたところで、今度は玄関の方からチャイムの音が響いた。受話器を上げようとしていた手が止まる。
 いつもならば、電話をとるか、先に玄関を開けるかなんてくだらないことで悩んだりしないのだが、さっきのまどろみが体にまとわりつくように残っていて、未だにわたしの思考回路をひどく鈍いものにしていた。
 手元にある電話と、玄関の扉を見比べる。


電話に出る
玄関へ行く