
御手杵は自己評価が低すぎると思う。二言目には「俺は刺すしかできない」とか言って逃げようとするし。近侍を頼んだときも、すっとぼけた発言をしていて、隙あらば逃げおおせようとしていたに違いない。だから、なんとか彼に自信を持ってもらいたくて、近侍として明日の会議への同行をお願いしたのに、また彼がいつものように、「うえー」とかなんとか気の抜けた返事をしたから、私を煙に巻こうとしているのが丸わかりだった。
「なんで嫌がるの」
「いや、俺は刺すしかできないし」
「理由になってまーせーんー」
「えぇー。前回みたいに長谷部に付き合ってもらえよー」
「やだ。もう決めたの」
「決めたって言われてもなぁ。俺つれてっても役に立たないぜ?」
「役に立つか立たないかを決めるのは、私」
じとりと睨むと、御手杵が大げさに肩を落として、息を吐いた。やっと観念したか、手のかかる奴め。腕を組んで、うむと偉ぶって頷いていると、背の高い彼が俯いているせいで、上目遣いで見られているような恰好になった。不服さを隠そうともせず下唇を噛んでいる。
「大体、何で俺なんだよ」
「御手杵ができる人だからだよ。少なくとも私はそう思ってるもん。いつも自信なさげなこととか嫌そうな素振りを見せるけど、なんだかんだそつなくこなすじゃない、あんた」
「うーん・・・」
「私は御手杵のこと信頼してるし好きなのに、そんなに自分のこと否定しないでよ。寂しくなるじゃない。そもそも何であんたってそんなことばっかり言うの」
うっかり「好きだ」という言葉が零れて、慌てて言葉を続けた。なんとかごまかしきれただろうかと、恐る恐る御手杵を見ると、ぱっと顔を上げて、にんまり笑っている。頭に疑問符が浮かんだ。
「だって、自信なさげにしてると、
褒めてくれんだもん」
「はあ?!」
「俺って愛されてんだなぁって思って」
「・・・あんたねえ!」
私の大きな声に、何人かが駆け寄ってきた。中でも最速で駆け付けた長谷部くんが、「主に何をした!」とか言いながら、怖い顔で御手杵に詰め寄っているのに、彼はどこ吹く風でへらへらとしながら、呆けた顔をしている私と目が合うと、一層笑みを深めた。やられた。
(2016.03.06)
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