
アルフォンスくんの手招きに従って、二人の背中についていくことにした。追いついて、隣を歩き出したわたしを、エドワードくんは横目で確認してから、まだ怒ってますよという顔をした。その顔があまりにかわいいので、ふふっと息を漏らしてしまう。不服そうな彼の視線に目を合わせ、にっこり微笑んでみせると、彼は勢いよく目をそらしてまたそっぽを向く。斜め上からアルフォンスくんの堪えるような笑い声が降ってきた。
「どこ行くの?」
「
さんに渡したいものがあって」
「そうなの?」
「はい、兄さんが」
「エドワードくんが」
言われた言葉の意味を飲み込むように復唱してみた。エドワードくんが上目遣いにアルフォンスくんをにらみつけているが、当のアルフォンスくんはどこ吹く風といった風情だ。
やはりバレンタインデーのお返しだろうか。思ったが、であれば何でさっきあんなに怒られたのかが分からない。怪訝な顔をしてエドワードくんを見れば、「チョコのお返し」と唇の先から小さく声を漏らした。すねたような横顔がかわいくて、また手が伸びそうになったが、怒鳴られるのが怖いのでやめておく。そうか、単純に照れたんだな、と気づいた瞬間、自惚れに違いない感情が湧き上がって、わずかに心臓が跳ねた。
目的地は二人の泊まっているホテルだった。部屋に入ると、ベッドに腰かけて目を瞑るように言われ、されるがままにしていた。
ぎしりとベッドが軋んで、背後から気配を感じる。わずかに緊張して鼓動が早くなっていたが、そんなことは億尾にも出さないように慎重に息をついた。首に何かがかけられたのが分かった。
「目、開けていいぜ」
耳元に落ちて来る声。思わず頬が熱くなった。
「これ…」
「別に深い意味はねえから!日頃のお礼も兼ねてだな」
「でも、なんか気が引ける」
「いいから!俺、
さんよりすっげえ稼いでるから!それに、俺らがあんたに渡したいんだから素直に受け取っとけよ」
それで、あの、えーっと。エドワードくんが何度も意味のない言葉を唸る。何気に失礼なことを言われた気がしたが、まあ事実だし黙っておこう。それにエドワードくんの面白いくらい必死な顔も見れたことだし。
首にかけられたのは、エドワードくんの髪と同じ色の宝石のついたシンプルなネックレスだった。今は軍服を着ているから分からないけれど、素肌にとても映えそうな趣味の良いものだ。
「ありがとね」
「いえいえ。喜んでもらえて良かったです。兄さんがものすごい頑張って探してて」
「アルと!俺で探したやつだから!」
エドワードくんが慌てて付け加えると、アルフォンスくんが少し意地悪そうに、くくっと声を立てて笑ったように聞こえた。
「それ見つけるまで大変だったんですよー」
「アル!」
「兄さん、店員さんに話しかけられて、"恋人にプレゼントですか?"って聞かれただけで真っ赤になっちゃって」
「なってねえよ!」
嬉々としてそのときの状況を事細かに話すアルフォンスくんを、エドワードくんが必死にとめようとしている。目の前で繰り広げられる微笑ましい光景に、わたしの頬は緩みっぱなしだ。エドワードくんに目を合わせて、もう一度「ありがとう」と言うと、彼ははにかんだように笑った。年相応の彼だ。
END.03 | アンバランスな彼(エド+アル)
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