ヒューズさんに連れだって再び戻ってきたわたしを、みんなはまた怪訝そうな顔で見つめた。こうなるのも覚悟の上だったので、わたしはすました顔のままでいられた。やはり中尉がどんなものをもらうのかがとても気になる。もしわたしと同じものであれば、着た姿を絶対に見たい!

 毎度のことながら、ヒューズさんはほとんど違和感なく部屋の景色にに溶け込んでいく。すぐに中尉を見つけて、わたしのときと同じような笑みを浮かべてカバンのなかから袋を取り出す。出てきた袋の感じもほとんどわたしがもらったものと変わらない。変わっているところはといえば、リボンが水色なことぐらいだ。
 開けてみろとヒューズさんに急かされ、何も知らない中尉はわずかに苦笑したものの、素直に従って紐に手をかけた。わたしは最後の悪あがきとして、正面にある大佐のデスクから死角になる位置に立っていた。

「これは…」

 中尉はあまりの衝撃に、袋の中身を握りしめたまま、お礼も言えずに固まってしまった。彼女の手のなかで皺を作っていたのは、牛の模様のついた淡い空色のパジャマだ。ヒューズさんが言うには、今度のこれは彼の奥様のものと色違いらしい。

「中尉も随分とかわいらしいものをもらったな」
「そんなに喜んでもらえるなら、俺も贈り甲斐があるってもんだ」

 不穏な空気を察知して、コーヒーカップ片手に大佐が歩み寄ってきた。固まる中尉を挑発するかのように、声を立てて笑う。俯く中尉の額に青筋が立ったような気がして、わたしの背筋が粟立った。あえて空気を読まないのか、ヒューズさんは相も変わらず快活な笑みを浮かべていて、これで悪気があってのことなら、彼は大佐よりも食えない人なのではないかと思う。
 しばらく沈黙を守っていた中尉がやっと口を開き、ヒューズさんに向かって精いっぱいの笑みを浮かべて、「ありがとうございます」と言った。唇が怒りかなにかのせいで震えていたのは、見ないことにする。

「着たら写真見せてくれよ」
「それは良いな。私もぜひ見たいものだ」
「丁重にお断りいたします」
「いいじゃねえか。それお前さんに絶対似合うぞ」
「そういう問題ではありません。寝間着姿を人に見せるなんてはしたない真似はできません」

 ぴしゃりと中尉が跳ねのけるように言う。ヒューズさんは、「ちぇー」と唇を尖らせた後、思い出したかのようにわたしの方へ向き直った。なんだか嫌な予感がする。

「まぁ仕方ねえか。は見せてくれるんだろ?約束したもんな」

 約束…したのだろうか?彼があまりに無邪気に言うので、二の句を告げなかった。すると中尉も、「あらそれはいいですね」とすっかり乗り気な様子で彼を煽る。

「えーっと…その、わたしもアレです、嫁入り前ですし」
「…そうか。そうだよな。残念だけど」
「すみません。有り難く使わせていただきますので」
「おう」

 ヒューズさんはあからさまに残念だという顔で、見せつけるように肩を竦めてみせた。こういうときのヒューズさんは本当にずるい。同情を煽るのがうまいというか。少なからずわたしが彼のことを好きだ(もちろん人としてという意味だが)ということを分かっていてやっている。

「あ、あの、」
「ヒューズ、心配するな」
「大佐?」
「私が今夜、の寝間着姿を見ておいてやろう」
「は…?」
「まぁ、もっとも。すぐに脱がせてしまうんだが」


END.02 | 今夜の予定は(ロイ+ヒューズ、中尉)


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